かたるべきこと

サブカル感想備忘録

課金反省文

 無職の身でソシャゲ課金で8万溶かしてしまった。

 

 まずは予算をどこから工面したかの話をする。

 ある以上の金は使わないという最低限の良識は持っているので(本当に最低な最低限だ)、箪笥貯金から支出した。クズなりに借金だけはしないというポリシーを持って生きてきたが、かといって貯金はしないクズの身である。それでも初就職だった前職で生まれて初めて得たボーナスとなれば、流石に意味のあることに使いたくて保留していた。使ったのはそれだ。手取りの半額、就職1年目に半ばお情け的に与えられたボーナスだった。

 職場の上司に嫌われて2年経たずに辞めることになった前職に良い思い出は一つもなかった。向こうからすれば縁故で取った中途の新人、必死で社会に馴染もうという気概がないと分かれば雇い続ける理由もなかった訳で。私の心は3年を費やしとうとう芽が出なかった資格勉強で幾分か萎えており、驚くほど受け身になっていた。中途の分際で「教えてくれればできる自信はある」という新卒めいた姿勢だったのが良くなかった。建前ではどう言っていても「手をかけなくても勝手に育って欲しい」という気怠さがにじみ出ている高齢化著しい停滞した職場には絶望的に噛み合わなかった。

 そんなこんなで無職となり再就職までの繋ぎに職業訓練に通う現状、少額とはいえ退職金が出たのもあり当座の生活に不安はなかったが、収入が失業給付のみでは先がない。要するに手元にあるのは使わない方が良い金。

 

 それでも使ったのは5年ログインを絶やしたことのないソシャゲの5周年記念で実装されたいわゆる環境キャラを引くためだったからだ。どちらかといえば自分はエンジョイ勢であり、またそのゲームは人と競う要素の少ないものであった。フレンドに対して肩身の狭い思いをすることになったとしても、引きに行かないという選択肢もあった。実際長年の友人と通話して無償分のリソースで回すまでは、それで出なければ諦めると決めていた。結果としてそれが呼び水となって、通話を切った後真っ暗な部屋で8万溶かしたのである。そう、結局出なかった。

 

 正直に言って、規模は小さいながらもこのゲームで似たような経験を重ねてきた。ゆえに最早感情の振れ幅は限りなく小さくなっていて、残ったのは悔しさでも悲しみでもなく虚無だった。一生こんなことを繰り返すのか? という自らへの問いかけだった。この文章を書くと決めたのは、現状少なくない価値を持つ8万円をドブに投げ込んだことを、放っておいたら忘れてしまうのではないかという危惧からだ。

 笑い飛ばしてくれる友人、ないし叱ってくれる家族がに近くにいればまた感じ方も違ったのかもしれないが、故郷を離れた孤独な身にはどちらも存在しない。社会性を養ってこなかった人生ゆえ、社会性のないふるまいをしてしまうし、それによって抱くべき後悔も抱かない。

 幸いだったのは犯罪と無縁な人生を送ってきたために、この危うい金銭感覚が社会悪と結びつかなかったことだ。とはいえこのふらふらした状態で社会を歩き続けたなら、近く詐欺や宗教の手にコロリと落ちてしまいそうだな、と実感はないが思う。それは避けたい。せめて「普段何してるか分からないけど人に迷惑はかけなさそう」な人間でありたい。

 

 長くなったが、いや反省文としてはこれでも短いと思うが、二度と「稼いだ実感のない金」で課金をしないことを誓う。他に使い道もないし……という消極的な理由で課金をするなら、それは逃避に他ならない。世の中の趣味について見分を広め、8万あればどんなことができるかを知ろうと思う。その上で課金がしたいと思ったなら、その時初めて自分の意志で課金をしたと言えるだろう。

 ネットに個人情報を書き連ねてしまったのには多少の後悔があるが、何年後かの自分が恥ずかしくなって消すまでは残しておきたい。見る人も少ないし、隠すほど価値のあることも書いていないと思う。

 最も使い慣れたこの文体で書いたが、現状どこにも振り切れていないこの滑稽さの種を、大事に育てて行けば俗な文章書きへの道が開けたりするのかもしれない。精進する。